岩瀬俊明さん、及川将弘さん、鳩貝健さんに決定
新たにシカゴ大学にも派遣、米大使館と共催でパネルディスカッション
「リレー・フォー・ライフ(RFL)マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞」の2015年度の授賞式が4月26日、東京・港区のアメリカンセンターJapanホールで開かれた。
同賞は日本対がん協会が各地の実行委員会と共に開催しているリレー・フォー・ライフに寄せられた寄付金をもとに、地域のがん医療の充実を図るために2010年度に設けられた米国における1年間の留学研修プログラム。全米有数のがん専門病院であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの協力と、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの支援の元にこれまで9名の若手医師を米国に送りだしてきた。
6年目となる今年からはシカゴ大学医学部でも同プログラムが実現し、3名の内1名がシカゴ大学で研修する。
今年度の受賞者は千葉大学付属病院臓器制御外科の岩瀬俊明医師(36)と、にゅうわ会及川病院乳腺外科の及川将弘医師(40)と、国立がん研究センター東病院消化管内科がん専門修練医の鳩貝健医師(35)の3名。岩瀬医師と及川医師がMDアンダーソンがんセンターで、鳩貝医師がシカゴ大学医学部でそれぞれ1年間研修する。
垣添忠生日本対がん協会会長が3人の受賞を発表、RFLJに寄せられたがん患者や支援者の思いをのせて、すばらしい研究環境の受け入れ先機関でぜひ貴重な経験を積んで欲しいと激励の言葉を述べた。
続いて上野直人MDアンダーソンがんセンター教授が3人の受賞者に奨励賞を授与した。順番に登壇した受賞者たちは、それぞれがん医療への思いや研修先での計画や夢を真摯に語った
RFLJのボランティアを代表して医師でがん経験者の坂下千瑞子氏が、寄付を寄せた大勢の仲間たちに代わって、期待と応援の言葉を述べた。
第2部は米国大使館と共催で「日本のがん研究の発展および未来のがん専門医の育成を目指して」と題するパネルディスカッションを開催。がん征圧という日米共通の目標のために日米相互の交流や米国留学の意義について意見が交わされた。
同奨励賞の第一回受賞者の増田紘子医師の講演の後、上野直人教授、シカゴ大学医学部のケネス・コエン教授、受賞者の古川孝広医師が、米国での研究生活や研究環境、心構えなどを話し、ビジョンを持って5年後、10年後を見据えて学んでほしいとがん専門医を目指す若い研究者を激励した。
会場にはがんの臨床研究に携わる医師や研究者、製薬会社やRFL関係者など80名あまりの聴衆が詰め掛け、熱心に聞き入っていた。
MOD奨励賞受賞の言葉「マイ・ドリーム」
患者さんの思いを原動力に、世界標準の治療を地域に広げたい
千葉大学附属病院臓器制御外科 岩瀬 俊明
リレー・フォー・ライフ・ジャパン(RFLJ)が10周年との事ですが、私は医師になって11年目になります。千葉県がんセンターなどで乳腺外科医としてトレーニングを積む中で、臨床試験に携わる機会が幾度かあり、セミナーやインターネット、上司からの耳学問など独学で学んで来ました。しかし、知識が深まるにつれ独学には限界を感じ、自分でもエビデンス作りに参加し、それを広めて地域医療を向上させるために系統だって学びたいという思いが強くなりました。今回、MDアンダーソンという海外のトップクラスのがん治療施設で研修するまたとない機会があることを知り応募しました。研修では臨床試験のやり方、企画・実践の様子を学び、日本に帰ったときには地域の実情にあった医療として還元したいと思います。RFLJに寄付をお寄せいただいた患者さんの思いを原動力として、患者中心の医療のあり方をぜひ学んで来たいと思います。
仲間と共にわが国の現状にあった乳がん治療・研究システムを構築したい
にゅうわ会及川病院乳腺外科 及川 将弘
福岡から参りました及川です。このたびは憧れのMDアンダーソンで研修する機会をいただき、今でも夢のようです。このご恩をどのようにお返ししようと考えています。私はこのアワード初の民間病院からの選出かと思いますが、乳がん診療・研究に携わっています。ホスピス15床を含む36床の小さな病院ですが、乳がん患者さんに最初から最後まで寄り添うという理念のもとに、乳がん専門病院として検診から緩和医療まで包括的に行ってきました。特に乳がん医療では患者さんに比べて医師不足が深刻で、多くの乳がん患者さんが市中の中小病院で治療を受けています。私はMDアンダーソンがんセンターで世界最高水準の乳がん診療に加え、臨床試験を含めたシステム作りを学びたいと思っています。それを九州に持ち帰り、仲間たちと共に九州に、そして日本に広げたいと思います。この機会を教えてくれた先生方にも心から感謝いたします。
アジアがんの治療開発に応用・貢献できるよう広く学びたい
国立がん研究センター東病院消化管内科 鳩貝 健
このような素晴らしい賞を頂き、大変嬉しく思うと同時に、シカゴ大学医学部へ派遣される1人目の医師として身の引き締まる思いです。私は消化器内科医としての経験を背景に、国立がん研究センター東病院では消化管悪性腫瘍を中心とするがんの化学療法に広く取り組んで参りました。特に最近は食道がんについて重点的に臨床研究やバイオマーカー・腫瘍免疫に関する研究を重ねてきました。食道がんは日本を始めアジアでは比較的頻度が高いものの、国際的な治療開発の枠組みから取り残され、10年以上標準治療が変わっていません。このようなアジアがんの治療開発に応用・貢献できるように、研修では治療薬の開発早期からの橋渡し研究(translational research)や開発早期の臨床試験について学びたいと考えています。また、免疫治療についても先行するアメリカで開発の状況について知見を広げ、今後の診療・研究に活かしていきたいと考えています。